管理レベルの飛躍的な向上により営業・販売の戦略的な意思決定が可能に

京都発の技術商社として、産業機器や半導体・デバイスなどを取り扱う株式会社たけびし。中期ビジョンで「海外ビジネスの拡大」を掲げる同社では、実績データをExcelで管理していたタイの販売拠点にSAP Business Oneを導入。導入プロジェクトでは、タイのビジネス要件に精通したコンサルタントを擁するbe one solutionsジャパンに支援を要請し、約4カ月で本稼動を迎えた。これにより管理レベルは飛躍的に向上し、さらなる成長に向けた戦略的な営業・販売活動が可能になっている。

 

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海外ビジネスの拡大に向けたタイの販売拠点へのSAP導入

1926年の創業以来、京都・滋賀地区を主力地盤に三菱電機製品を中心とした産業用電機・電子機器を取り扱う技術商社として成長を続ける株式会社たけびし。中期ビジョン「T-Link 1000」において2022年度の売上高1,000億の達成を掲げる同社では、FAを中心とした"強み"のさらなる強化をテーマに、ロボットシステムビジネスの拡大やAI・IoT技術を駆使した独自商品の開発に注力している。

もう1つの重要なテーマは、海外ビジネスの拡大だ。中国・東南アジアにおける新たな需要の開拓は大きな期待がかかる成長領域だが、その中で1つの課題となっていたのがタイの販売拠点のシステムだった。

同社の主要な海外拠点のうち、香港、上海、ヨーロッパ(オランダ)の販売拠点には、すでに各国の税制・商習慣に対応したSAP Business Oneが導入されており、タイの販売拠点だけが未導入の状況だった。経営推進室 経理部長付 海外担当課長の平井信彦氏は次のように話す。

「2014年の設立以来、タイの販売拠点では現地ベンダーの会計ソフトとExcelを使って、実績データなどの管理が行われてきました。簡易的な会計ソフトのため、手作業で対応しなければならない部分も多く、レポート作成や月次決算も他の海外拠点と比べて長い時間を要していました。タイのビジネスはFAコンポーネントを中心に急拡大しており、2020年には売上の倍増を見込んでいるだけに、こうした属人的なIT環境の刷新は急務でした」

1997年にSAP R/3を本社に初めて導入して以来、20年以上にわたってSAP ERPを利用してきた同社にとって、タイの販売拠点もSAP Business Oneで統合するのが既定路線である。むしろここで問題になったのは、特殊要件の多いタイのビジネスに対応したSAP Business Oneの導入プロジェクトを、一貫して支援してくれる導入パートナーの選定だった。

タイの要件に精通したコンサルタントなどbe one solutionsの支援体制を評価

海外におけるSAP Business Oneの導入実績があるいくつかの日系ベンダーを検討した結果、最終的にたけびしはbe one solutionsに支援を要請することを決定した。その理由について、経営推進室 情報システム部長の平井克典氏は次のように説明する。

「きっかけは2018年12月のJSUG Conferenceで聴講したbe one solutionsジャパンのセッションでした。その後、具体的な要件を伝えて提案をお願いしたところ、タイのビジネス要件に精通し、タイ語と英語と日本語のコミュニケーションに長けたコンサルタントをアサインできるという回答をいただけました。タイの拠点には専任のIT担当者がいないため、現地の業務担当者との会話やマニュアルの整備は重要な要件でした。加えて、SAP Business Oneそのものの開発にも関わったワールドワイドな会社である点にも期待を感じました」

プロジェクトは、2019年3月にキックオフ。要件定義、開発、テスト、ユーザー教育などを経て、4カ月後の7月には無事にゴーライブを迎えた。この過程では標準機能を活用し、アドオン開発は行わないことを基本方針としたが、タイの独自要件に合わせたレポートについては、SAP Business Oneのクエリ機能を用いて10本程度を開発している。

FAコンポーネントを中心に取り扱うタイの拠点は、電子デバイスや半導体がメインの他の海外拠点と比べて、ビジネスモデルが異なる。電子デバイスは単価が安い製品を大量に扱うのに対して、FAコンポーネントは製品単価は高いが扱う数量は少なく、案件ごとに異なる複数の仕入先より部品を仕入れて工場で組み上げ、ユニットとして出荷する。そのため製品の原価のみならず、1案件ごとの収支管理が非常に重要な要件となっており、それらを一元的に管理できる独自の機能が求められた。こうした要件に対しても、be one solutionsは過去のノウハウを活かして柔軟な対応力を発揮した。

スケジュールもほぼ予定通りに進んだ当プロジェクトについて、平井信彦氏は次のように振り返る。

「be one solutionsのコンサルタントのSAP製品に対するスキルの高さは、期待した以上でした。私たちが日本からタイに出向いてオンサイトでサポートしたのは、選定時、要件定義、受け入れテストの3回だけです。あとはすべて現地の業務担当者がbe one solutionsの2名のコンサルサントと一緒に進めました。タイ語やタイのビジネスを理解しているので、深いところまで現地の意図を汲んで対応してもらうことができました」

さまざまな管理指標を正確かつリアルタイムで把握

タイの拠点では現在、会計担当者とロジスティクス担当者の合わせて6名がSAP Business Oneを利用しており、be one solutionsのサポートを受けながら、運用を軌道に乗せるべく習熟に励んでいる。

現在は本稼動からまだ半年の段階だが、すでにいくつかの成果も現れている。真っ先に挙げられるのが、管理レベルが飛躍的に向上したことだ。平井克典氏は「それまでの簡易な会計ソフトとExcelの環境では、仕入、出荷、受注などの数値を正確かつ迅速に把握するのは困難でした。SAP Business Oneを導入してからは、さまざまな管理指標がリアルタイムで確認ができます。製品原価、機種別の損益、顧客別の損益などの分析も可能になり、今後は営業・販売戦略のより高度な意思決定が可能になります」と説明する。

月次レポートの作成期間については、現状では大きな成果は報告されていないが、いずれは他の海外拠点と同様、5~7営業日内での集約を見込んでいる。また四半期決算は稼動後に1回実施済みだが、初回は従来の手法と並行して整合性を確認したことから、こちらも次回以降でさらなる効率化と決算の早期確定を目指すという。

本社システムのSAP S/4HANA移行と海外拠点との高度な連携も視野

タイへのSAP Business One導入は、たけびしとbe one solutionsによる初めてのプロジェクトとなったが、同社はこの成果を高く評価しており、次のステップとして上海拠点で稼動中のSAP Business Oneの保守をbe one solutionsに委託することを決定した。具体的には、現行システムのハードウェア保守が終了する2020年3月のタイミングで、新たなサーバー環境にSAP Business Oneを移行し、運用保守をbe one solutionsに切り替える予定だ。

本社を含めた基幹システム全体の将来については、国内と海外のより高度なシステム連携を模索している。国内のSAP ERPは、2022年を目処にSAP S/4HANAに移行することを検討中で、現在は評価・構想のフェーズに入っている。

「ゆくゆくは国内で稼動するSAP S/4HANAと海外拠点のSAP Business Oneを連携してデータフォーマットを統一し、2階層ERPとすることでグループの経営状況をリアルタイムに把握できるようにしていきます」(平井克典氏)

また同社では、SAP ERPの周辺システムにおいても、Web受発注システム、見積・受注一括作成システムなどの導入・連携を通じて、社員がより効率的に働ける環境整備を進めている。

SAPの導入当初から、基本的に自社内のリソースでシステム強化を進めてきたたけびしだが、今後は外部のパートナーとも適材適所で協働しながら、ITの進化に合わせたビジネス基盤の強化に取り組んでいく考えだ。そうした意味でも、今回のSAP Business One導入プロジェクトは、未来の成長に向けた新たなスタート地点となるに違いない。

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